はじめに
2023年8月6日に行われたリモートポケモン学会が主催した「ポケモン海外言語学会」で、英語、フランス語、ドイツ語の3言語でプレイした日本人がそれぞれの言語での事例を紹介するという形式の座談会に招待された。
当日は、ポケモン名、台詞、人物名、技名の4つについて、それぞれが発表するという形式をとった。
ただ、2時間半におよぶ座談会であるため、フランス語の内容については、文字で追えるように、言及した内容を紹介したい。
*おことわり
フランス語のポケモン名や人名については、ジュリアン・バーダコフ氏がかかわった翻訳(赤緑ークリスタル)については本人が公開しておりますが、それ以外の作品については、基本的に部外者による推測でしかありません。
1:ポケモン名
1-1 ポットデス
英語と同じ由来でPolthégeist
ポルターガイスト(独Poltergeist)とthé(茶)
進化前のヤバチャ
Théffroi
effroi怖がらせる とthé froid(冷たい茶)
1-2 ズガドーン
Pierroteknik
pyro- (希)で炎
pyroteknik 花火、火を使った技術 フランス語ならpyrotechniqueになるが、発音が同じqueを字数の関係でkに置き換えた可能性あり
pierro ピエロ
1-3 カエンジシ
Némélios
Lion de Némée ネメアーの獅子 ギリシャ神話に登場するライオン
1-4 エースバーン
Pyrobut
pylo-(希)炎
but (サッカーのゴール、得点)
1-5 オンバット
オンバット
Sonistrelle
sonique 音の
Pipistrellus コウモリの一種
オンバーン
Bryyverne
wyverne ワイバーン
bruit 音 騒音
ナッシー
Noadkoko
noix de coco ココナッツ 発音が似ている
参考 フランス語でハイフンがあるポケモン
2:台詞
2-1 Bon voyageではなくてadieu
オーリム/フトゥーAIの最後の台詞は、bon voyageでなくて、adieuとなっている。
adieuは、基本的に、長期間の別れ*1、ないし今生の別れ(生きている間に二度と会うことは無いだろう、という意味が込められている)
そのため、AI博士の主観としては、ペパーはじめ主人公一行ともう二度と会うことはないだろう、との考えのもとで発言したことになる。
Poursuives vos avanteures ! 冒険を続けよ
Restez libres ! 自由であれ !
Adieu ! さらば!(今生の別れだ!)
2-2 ジムリーダーはチャンピオン?
Arène ジム(アリーナ)
champion(ne) ジムリーダー
maître チャンピオン(maîtreは英語のmasterに相当する語)
2-3 ローズの発言
3:人物名
3-1 カイ
Naccharra
nacchara 中古ラテン語 真珠層
3-2 ウォロ
ウォロ Percupio
percupio(羅)切望する
なお、「ポケモンつかい」はExpert en Pokemon(ポケモンの専門家)
volo ergo sum (羅)われ欲すゆえにわれあり。デカルトの下記「われ思うゆえにわれあり」を意識している。
コギト
Penséa
pensée 思う 考える
参考
cogito ergo sum デカルト『省察』(ラテン語で執筆) われ思うゆえにわれあり
je pense donc je suis デカルト『方法序説』(フランス語で執筆) われ思うゆえにわれあり
なお、git がアメリカの俗語で「クズ」などを意味するためか、剣盾以降の作品で主人公の名前やポケモンのニックネームに使用できない。そのため、CogitoやCogitaの名前はゲーム中で使用できない。*2
4:技名
4-1 ゴールドラッシュ
Ruée d'Or 金が押し寄せる
Ruée ver d'Or (歴史用語の)ゴールドラッシュ 金に向かって押し寄せる
or 金
ruée は押し寄せる
verは前置詞で「~の方向に向かって」という意味。そのため、歴史用語のRuée ver d'Orは「(人が)金に向かって押し寄せる」という意味になるが、技名のゴールドラッシュは「金が押し寄せる」
4-2 てっていこうせん
Métalaser
Métal 金属
lesar レーザー
méta- も関係ある?
4-3 はるのあらし
Typhon passionné 情熱的な台風 春の要素は消えた?
ラブトロスの仏語名 Amovénus
amour 愛
vénus ヴィーナス 古代ローマではヴィーナスは春と結びついていた。
参考 フランス語での「嵐」や「台風」の意味
4:00あたりより、Tatsさんの解説あり。
最後に、発案者のsangoさん、登壇者のまろーじぇさん、リモポケ学会スタッフの皆様にこの場を借りてお礼を申し上げます。
以上