2023年8月6日にリモートポケモン学会で実施した、「ポケモン海外言語学会」で語ろうとして語れなかったこと。
本編はこちら
ポケモン名
似た名前のポケモン:ゲッコウガとハラバリー
Amphibien(仏:両生類)が名前に入っていることから、音も似たような名前になってしまった。
ゲッコウガ Amphinobi(アンフィノビ): amphibien(両生類)+shinobi(忍)
ハラバリー Ampididou(アンピビドゥ): amphibien(両生類)+ampère(アンペア)+bidou(お腹)
どちらも蛙がモデルになったポケモンであるため、綴りも発音も極めて似た名前になってしまった。ゲッコウガについては、初代フランス語翻訳担当者であった、ジュリアン・バーダコフ氏も、すごい訳だと褒めている。*1
特性「でんきにかえる」はgrechargeで
grenouille(f.カエル、アマガエル)とcharger(充電する、燃料を汲む)が由来だと思われる。
また似た綴りのéchange(交換)もかけている可能性もあるため、
「でんきにかえる」の「蛙」と「変える」をうまく表現した訳と言える。
テラパゴス(Terapagos)の進化前?
フォロワーさんに教えていただいたのだが、フランス語でMégapagosはアバゴーラを指すらしい。どちらも亀がモデルとなったポケモンであるため、姿も似ていることから、テラパゴスの名前が発表された後、フランス語圏のSNSではアバゴーラとの関係について議論があったらしい。
イーブイのフランス語名 Évoli
2023年5月の発表スライドに含めていたが、読み上げはしなかった箇所
Évoli(エヴォリ) évolution(進化) Lithe-(リトス、ギリシャ語の石)
イーブイの進化系の名前はは全てliで終わる。以下、由来説明において煩雑のためli は省略
Pyroli(ピロリ): pyro(ギリシャ語で炎)
Aquali(アクアリ) aqua(ラテン語で水)
Voltali(ヴォルタリ) voltage(電圧)
Mentali(マンタリ) mental(精神)
Noctali(ノクタリ) nocturne(夜の)
Phyllali(フィラリ)phyllon(ギリシャ語で葉)
Givrali(ジヴラリ)givre(霜、霧氷)
Nymphali(ナンファリ) nymphe(ニンフ)
また、バーダコフ氏によると、末尾がi でおわると、かわいらしい印象を持つとのことである。*2
なお、ドイツ語でもEvoliであるが、これはおそらくフランス語版が先に翻訳されたため、フランス語名を参照したのだろう。
わざ名
Eau Revoir(オ・ルヴォワール)
eau(水) と au revoir フランス語で別れの挨拶。
クイックターンのフランス語名。
eau とauは発音が一緒であるため、音も似せている訳である。
*ヤバチャThéffroi がthé froid (冷たいお茶、アイスティー)と同じ音になっているのと同様に、音も似せた訳がフランス語版には多い。
Sabotage(サボタージュ)物を破壊?
はたきおとすのフランス語名はsabotageで、サボるの由来になった言葉である。
工場労働者が、工場の所有者に対して文句を言うために、工場の生産設備を意図的に破壊したり、ぞんざいに扱うことを意味する。
ものを壊して使えなくする、というところから、はたきおとすの訳に用いられたのかもしれない。
日本語と違う用語
テラスタル
テラスタルはTéraclystallisation(テラクリスタル化)で、基本的にtéraclystal
動詞(テラスタルする)はtéraclystalliser (テラクリスタルする)
テラスタイプ Type téraclystal
世界共通名称の補足
翻訳を禁止されたポケモン
バーダコフ氏の回想によると*3、
トゲピー系統は、アニメのマスコット枠として使うために、日本側に名前を変えることを許可されなかったとのこと。
また、マリルについても、アニメのマスコットとして使う可能性があるために、同様に変えることを許可されなかったという。
その他
こちらに、2023/5/14のリモポケ学会で報告したときに、参考文献の紹介を忘れていたので、スライドに載せていた内容を追記しました。
carrefourpokemon.hatenablog.com
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以上
*1:
Le SECRET des noms FRANÇAIS des POKÉMON - Interview Julien Bardakoff - YouTube
バーダコフ氏へのインタビュー。氏が手掛けた251匹のポケモン名について由来を解説
*2:«Īvui vient du mot «évolution» : ce Pokémon a la particularité de pouvoir évoluer en différents types. En français, Evoli garde cette idée d’évolution, avec un «i» à la fin parce qu’il est petit et mignon. Et puis, la terminaison -li évoque la racine grecque «-lithe», pour la pierre, parce que son évolution dépend de la pierre d’évolution qu’on lui donne.»
Libération.fr – Pokémon, traduisez-les tous
*3:
Le SECRET des noms FRANÇAIS des POKÉMON - Interview Julien Bardakoff - YouTube